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そもそも東京電力に賠償金は払えない

その社債は定期預金のような安定運用先とまで言われた、天下の大企業東京電力様がえらい事故をやらしてくださいましてまさに国民の怒りが有頂天に達しようとしている昨今ですが、皆様はいかがお過ごしでしょうか?
ぼくたちのインターネットは「東電社員は給料返上して国民に謝れ」だの「社長の私財を没収しろ」だの散見されるややバイオレンス感あふれる状況ですが、中には「東京電力はさっさと賠償金払え」という意見がチラホラ見られ、あやややや、これは少し気になるなと。

東京電力という会社は一般的なイメージだと『インフラ抑えてるからぼろ儲け』とか『安定企業』みたいな感じでしょうか。確かにインフラ産業なので潰れることはないのですが、儲かっているかと言われると最近は案外そうでもありません。直近の平成22年3月決算では黒字を確保したものの、その前期(平成21年3月期)、前々期(平成20年3月期)は燃料の高騰と柏崎刈羽原発の運転停止などもあり、2期連続で赤字が続いていました。足元でようやく黒字に転換したと思った途端にこの事故と、東京電力はその創業以来最大の受難期にあります。

さて、今回の原発事故における賠償金の額は数兆円にものぼると言われていますが、コレは東京電力に果たして払える額なのかと。

まずは東京電力の収支・財務状況を見てみましょう。

td.JPG

これは直近2期の決算、及び今期第3四半期までの決算を整理したもので、主要科目について内数として白地で抜き出しています。また連結財務諸表ではなく、個社のものを表記しています。

まず手っ取り早く賠償金の原資となりそうな現金。直近の22/12期だと2,700億しかありません。貸倒や短期的な支出増に対応するためにも、手元資金を保有しておく水準は一般的に最低月商の1ヶ月程度と言われていますが、東電は0.64ヶ月です。22/3期の決算だと0.19ヶ月しかなかったりします。
では、なぜこれほどの低水準の現金保有量で東電はやっていけているのかというと、大企業であれば銀行と「コミットメントライン」という融資枠の契約をしていることが多いためです。これは「要るときに貸してよ。1兆円まで!」「いいよ~」という契約を事前にしておくことで、銀行を貯金箱代わりに使える便利な契約です。おかげで手元に念のための余剰資金を置いておく必要がなくなるので、銀行からの借入も少なくなるというわけです。一方、利息収入は減ってしまうものの大口先を顧客に繋いでおくメリットがあるので、銀行サイドにもメリットはあるのです。

 

さておき、数兆円の賠償金を払うにしても、手元には2,700億円しかないことがわかりました。
ゲームショップに行って5,800円のゲームを買おうと財布を開いたら580円しかなかったようなものです。全然足りません。おまけに、この580円も先月お菓子屋さんで買ったうまい棒の代金を支払うお金なので、ゲームを買う用途に使ってはいけないお金だったりするわけです。つまりこれは商売に必要なお金なので、賠償金に充てられるようなものではないのです。

さらに悪いことに東電には7兆円を超える借金があります。電力業界なんてのは、先に設備装置にガツンと資金を投入して、後からその資金をお客から少しずつ回収していくタイプの典型的な装置産業なので、とにかく資本が必要なのですね。
バランスシート左側の固定資産にもあるとおり、発電設備や送電・配電設備に兆単位の資金が投入されています。借入金はこれら設備投資に投入され、日々の売上原資になっているというビジネスモデルというわけですね。
で、流動負債の欄にあるとおり、この1年以内で返済期限が到来する借入金だけで1兆円を超えるわけです。なんてこった。

おまけにご存知のとおり無計画停電をせざるを得ない事態に追い込まれ電力の使用量も激減。あわせて売上も激減していることでしょう。また、事故処理に使っている資金も膨大でしょうし、当然今期の決算は大幅な赤字が予想されます。

まとめると、東電がこの1年で必要なお金は次のとおりとなります。

  1.  賠償金数兆円
  2. 借入金返済額1兆強
  3. 赤字補填資金

手元資金は2,700億円です。さぁどうする?という話。

東京電力は今、2つの大きな問題を抱えています。1つは原発の処理の問題。もう1つは会社存続の問題です。
この2つは同じくらい重要な問題で、片方でさえ未解決で終わらせることは許されません。原発の問題を解決しないで会社存続はありえないでしょうし、原発がこのような状況で会社が倒産して現場大混乱とか笑い話にもなりません。今回の件では、事故の対応にあたった人がいる一方で、裏では資金調達に奔走していた人がいたであろうことは想像に難くありません。

東京電力の資金調達は多くを社債に依存していますが、今、社債を発行したところで当然誰も買いません。今年の社債発行額はゼロになると言われており、市場からの資金調達はもはや絶望的です。
となると残りは銀行借入しかないわけで、先日報道されたとおり、メガバンクが2兆円程度の協調融資を実行しています。これが東電の、最後の資金の出所です。

銀行の資金というのも、無から発生しているわけではありません。錬金術師はあいにく銀行にお勤めではないのです。当然これらの資金は最終的には預金者から出されているわけで、銀行だけが東電を支えるとなるとある種、預金者負担となるとも言えます。
2兆円というのもロットとしてはかなりの規模ですが、今回の問題からすると「とりあえず昼飯を食べることができたが晩飯の調達は未定」くらいのレベルなので、最終的な解決には至りません。いずれ晩飯は用意しなければならないのです。
また、銀行団としてもこの水準くらいの支援が限界に近いのではないかと思われます。融資は、返してもらうまでが融資です。最終的に何兆円まで賠償金が膨らむか不明なこと、東京電力の収支回復が何年かかるか不明なので償還資源の見通しが立たないことを考えると、この先も銀行がジャンジャン金を出し続けて、打ち出の小槌状態になるというのはやや想像しづらい。

 

結論としては、賠償金は国の金を出さざるを得ないでしょうね。

だって、東京電力はその金を持ってないし、これからも持たないので。
結局いつの時代も子供にゲームを買い与えるのはお母さんということなのかもしれません。

そこからの論点は「どのような形で国が金を出すと出費が最小限で済むか」の検討になるのでしょうが、まぁその辺はえらい人がやってくれることでしょう。待ってます(投げやり)。個人的には分社方式がベストかなぁとも思ってるんですが。あとは復興国債あたりですかね。いいから諭吉刷れ、諭吉。

ともあれ、このような『too big to fail』問題については、先日の金融危機と被るところも大きいのですが、リーマンの時と同様、悪役がわかりやすすぎるというのも問題解決の一つの障害となっているなぁという印象です。
悪い奴はわかりきっているので叩きたくなる心情もわかるのですが、勧善懲悪はあくまでエンターテイメントの一つの手法であって、それは問題解決の技法とはまったくの別物ですから、これを混同してしまうと残念な反応を見せてしまうなぁと。

 

おまけ資料として、「22/3期の原子力発電を全て火力発電に変えたらどうなるか」みたいなシミュレーションも作ってみたのでどうぞ。比率の掛け算しただけの単純なものですけどね。原子力発電と火力発電ってどれくらいコスト違うのかなぁと思ったもので。

まず、これが現状の発電量の比率です。

WS02021.JPG

この22/3期の原子力発電で補った発電量を全て火力発電で補った「想定期」というものを右側に付記しています。

WS02022.JPG

2,000億強の収支悪化となりました。実際は設備増強にかかるコスト等ありますからもっと費用がかかるでしょうけれど、単純計算でもこんなものですね。化石燃料の価格も上昇するでしょうし、これからご家庭の電気代は少し高くなることでしょう。

 

それにしても「原子力はイカんなー。今求められているのは政権交代次世代のエネルギーではないか」とボーっと考えていたところ、深層心理から「長友……長友のエネルギーを発電に使うのだ……」という宇宙の声を受信したので最近仕事になりません。

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