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死んだらムラサキをもう一度遊びたい

「完璧」とは何だろう。思えば世の中に完璧なんてものはないのかもしれません。『メジャー パーフェクトクローザー』は完璧どころか野球部分すら怪しかったですし、かつてキン肉マンは、完璧超人のタッグであるヘル・ミッショネルズ戦で「おまえたちもようやくわかったろうぜ、この世の中に完璧などというものがないことが―っ!!」と言っていました。ゆでがキン肉マンにそこまで言わせるのならそうなのかな、と思わなくもないですが、果たしてそうなのでしょうか。

辞書で「完璧」を調べるとこうあります。

 ①欠点が少しもないこと、完全無欠
 ②カタテマ作『ムラサキ』

ムラサキ!! えらく具体的に書いてますね。お手元の辞書もぜひ開いてみてください。必ず書いてあるはずです。

『ムラサキ』は一言で言うと調和のゲーム。断片的に見せられる設定、登場するキャラクター、音楽、すべては5面のラストバトルのために準備されたもので、ラストバトルを戦いながら、プレイヤーはすべての収束を1点で回収することになります。プレイヤーがすべてを終えたとき、そこには一切食べ残しのないキレイなお皿があって、「完璧……」というため息以外何も出てこないことでしょう。「いつかあの場所で」の楽器が1つずつ増えていく演出、良さみしかない……。

この完璧なゲームに何か刺激を与えるとどこか危ういところで成り立ったバランスが崩れて完璧が完璧じゃなくなってしまうんじゃないか、砂で作ったお城は消えてしまうんじゃないかみたいに思わせられるあまりの調和の取れっぷりに、続編が出るなんて考えてもみなかったですけど、ムラサキの続編ですよ、続編。そんな幸せなことがあっていいはずが……。


あった!!! ムラサキ劍!!!!


システムは『ムラサキ』同様、ショットは1発しか打てず、赤や青のブロックに弾をぶつけてビリヤードのように連鎖させ、爆発させるゲームです。たとえばこの画面だと、左にある青いブロックを中心から左あたりの場所で一発打てばビリヤードみたいに玉突きで上にあるブロックとぶつかっていったあと連鎖爆発起こして敵弾も敵も全部消えます。ブロックは時間の経過とともに湧いてくるので、ポイントを見極めてショットを発射、連鎖、爆発、楽しい!

前作と異なるのは、赤や青のブロック自体に当たり判定がなくなって敵弾だけに気をつければ良くなった点と、ブロックの色の種類が基本赤と青だけになってシンプル化した点ですかね。おかげで、本来連鎖を作る材料であるはずのブロックに当たって死ぬこともないし、ブロックの色が少ないので連鎖が作りやすい。ゲームって続編になると前作のシステムに要素を付加して複雑になるパターンのほうが多いと思うんですけど、削ってシンプルになるケースって珍しい気がしますね。ブロックの当たり判定がなくなったことは、快適に遊べる一方で、ムラサキ特有の「考える要素」が減った気もするので好みの世界はあるかも。


連鎖が心地よいパズル感は『いりす症候群』をベースにしているような面もあり、カタテマお得意の分野ですが、『ムラサキ』はSTGにしてはショットを打つタイミングを図れるような時間がゆっくりと流れるゲームだけに、「今タイミングミスったな」という後悔する余地の大きいゲームです。成功したか失敗したかすぐに教えてくれるのはゲームの素晴らしいところです。それに、良いゲームというのは、自分の選択に責任を持たせてくれること、そして失敗に気づかせてくれるゲームのことだと、亡くなったうちの犬も言っていました。


条件を満たすと徐々に解除されていくエピソード集も継続。「設定見てるだけで泣く」とさえ言われる不条理な内容が淡々とした文体で表現されるコレクション要素はムラサキのもう一つの本体。いや文章一本でこれだけ実績解除に駆り立てる力すごくないですか。これ退屈な文章書かれてたらコレクション要素の欠片もないんですけど、2バイトの文字の積み重ね見るためだけに実績解除させるてつさんの筆力恐るべしですよ。あまりにも全部読みたいので『ムラサキ』も『ムラサキ劍』も泣きながらフルコンプした。前作の6面のお姉ちゃん戦やりすぎてツギハギプリンセスが頭から鳴り止まなくなったぞ。何回聞いても飽きないめっちゃいい曲で良かった!



ちなみに3面でライフ全開でボス前まで行くと、デカい魚が通り過ぎって行ったあたりで、画面端に海浬か沙月でいずれか選択しなかった方のキャラが出てきて会話が始まる隠し要素があります。前兆なしに唐突に始まるので注意。実はここの会話がエンディングでの沙月のある発言に繋がってたりするので、そういう裏設定的な流れに意味を感じちゃう人は見といたほうが良いです。


昔、ファミ通の編集長やってたときの浜村通信が「君はファイアーエムブレムをやったことがあるか? なければ君は幸せだ。これからファイアーエムブレムを体験することができるのだから」と書いてたのが印象に残ってるんですけど、人間一度経験すると「知ってしまう」というデメリットがあって同じ体験に対してどうしても感動値が落ちてしまうという欠点があるのですよね。
「覚える」という能力は種が生存するのに最適であれど、生存が確定的な世の中で生を楽しむには最適ではない。ですので、正直言うと、どうしてもムラサキで初回に最後までたどり着いたときほどの心の震えはムラサキ劍に感じることはできないところがあったんですけど、それはゲームに問題があるのではなく、人間に問題があるのですよね。

人間が年をとるというのは、楽しみのパターンを経験して埋めていくことで、自分が楽しみを感じる要素を潰していく性質があって、それが故に年をとると心を震わされる機会がだんだん減っていって、不感症になってしまうのではないですかね。だから多分、人間が不老不死を得てもそれはきっと楽しみのない地獄。ならば死ぬことですべてを忘れて輪廻転生できるというワンチャンに期待して、あの楽しみをもう一度最初から体験できることに賭けてしまうような気もします。

あるいは人類は既に一度不老不死を手に入れたあと、それに不満を感じて輪廻転生の技術を開発した結果、すべてを忘れて我々がここにいるのかもしれません。だとすると先祖に感謝しなければなりません。もしムラサキをやっていないなら幸せだ。あなたはムラサキをこれから体験することができるのだから。

生涯を添い遂げるゲームはありますか

年を食ってくるとご飯を食べる量が減ってきますが、代わりに昔に思いを馳せて暮らす時間が長くなって来るというバランスが設定されているのが人生というゲームです。「物質的な食事」と「精神的な食事」の合計値は常に一定であり、子どもはたくさんご飯を食べて過去を振りかえることに人生を費やさず、老人は食の楽しみの代償に思い出話の楽しさを知ることができたわけです。

ゲームとともに生まれ育ったからには、それぞれの人間には一生遊び続けるゲームのシリーズというものは存在して、我々が死を目の前に迎える頃には20作も30作も遊び続けたシリーズがあり、その思い出話が残りの人生の精神的な食事になるのではないかと思うことがあります。自分の上の世代とかを見て考えても、おそらく人間は世代によって思い出話の内容が変わるだけで、思い出話をすること自体はおそらく避けられない生き物…。

未来に待ち受けるのが思い出話しかできない老人ライフであるならば、せめてその思い出話をしながら自分たちの人生を彩ってきたコンテンツに囲まれてそのまま死にたいじゃないですか。死出の旅には花なんていらない、ただコンテンツがあればいい。ちょっと前にやってた『セハガール』なんてのは未来のゲーマー老人ホームを疑似体験させてくれたアニメでしたけど、ああいう未来をこそ我々は獲得したい。

ついでに老人話をすると、今の老人ホームって趣味が混在している色んな人を押し込んでいるから、いわゆる「会話のプロトコル」が合わない人たち同士になっていて楽しくないんじゃないですかね。なので最大公約数的な娯楽である「歌」とか「トランプ」とかでしか楽しみを提供できない。非電源系ゲームを提供したところで「今更ルール覚えるのも面倒くさい」と興味ない人が殆どでしょう。
まだ若い大学生ですら「サークル」という形で趣味で分断することにより何とか集団を形成しているのだから、嗜好が硬直化した老人にとって趣味も人生もバラバラだった人たちで群を形成するのはさぞ辛かろうと思います。ですので、サークル活動のように趣味で分断されたコンセプト老人ホームのような形態の方が人間は幸せになれると思うし、ニーズは実際にあると思うので、起業家の皆さんはぜひ未来のためにそういうビジネスを頑張っていただきたいです。ゲーム老人ホームに入ってダラダラ暮らせる未来が待っているならば年を取るのも怖くなくなるね!
いいな、コンセプト老人ホームだぞ!

長くなりましたけど、おそらく自分にとって生涯添い遂げるゲームになると思われるのがパワプロで、初代パワプロからずっとやり続けてきていますが、この度めでたく2018版もリリースされるに相成りました。おめでてぇですね。

あと何年生きるかわからないけど、生きてたら絶対将来実況パワフルプロ野球2050とか遊んでるんだろうなぁ。というか書いてて思ったけどパワプロ2050とか数字増やしただけなのに語感ヤバいな! 言葉的には完全にサイバープロ野球感ある。めっちゃエレクトロであり、アンドロメダ高校の世界観だ。いや、実際その時が訪れれば普通の野球やってんだろうけど…。


まぁそんなわけでパワプロ2018ですよ。ゴールデンウィークどこにも行かずに、家でプロ野球見ながら終わったらスマホでハチナイの試合を走らせながらパワプロやるというバトルスタディーズもびっくりの野球漬けの毎日やってたので、今回もざっと感想入れていこうと思います。


パワフェスは、ほぼ前作の2016仕様そのままながら、余計なルーレットとか付いてきて、運が悪いと「大差付けて勝ったのに仲間になるのは敵のキャプテンのみ」みたいなことが起きるのがストレス。

回避法としては、全部同時停止させずに左と真ん中のルーレットを一つずつ止めながら、一番右のルーレットを止める際に「勝ったら3人」が9時の方向にあるタイミングで「option」ボタンを押せば、目押しで「勝ったら3人」を止められるくらいですかね。
ただ、そういう回避法使わないといけない時点で苦行ポイント高い。目押しめんどいねん。倒したチームのキャラを仲間にしながらトーナメントを進んでいくという冥球島方式の時点で面白いので、余計な要素は料理が油っこくなるだけという悲しみ。

 ただ結局その冥球島方式自体が面白すぎるので、何周も何周も遊んでしまうですのよ。パワプロをずっと遊んできたプレイヤーにとっては、過去のパワプロキャラと戦ったり仲間にしたりできるのは、それだけで思い出老人ホームの世界として楽しすぎるのよね。打席に立つたびに実況に読み上げられるキャラクターのエピソードとかつい聞いてしまう。友沢vsみずきの対戦だったら対戦中に特殊な実況が読まれるなどの演出もあり、キャラゲーとしての完成度は高い。
それだけに最近パワプロ遊びだした人にはわけわからんところはあるかもしれないけど、むしろ昔パワプロ遊んでて今遊んでいない人こそパワフェスを一度遊んでみてほしい。自分の脳にある過去の思い出とミックスして遊ぶゲームですよ、これは!

あと、過去のシリーズのキャラを持ってくるという体裁にすると、女にモテるキャラ付された選手が多すぎ問題。ミートの高い器用なショート(サブポジでセカンドとかサードができがち)とかエグザイル並に増殖してるし、イケメン属性ピッチャーの数はもはや不明。アゴがデカイ奴は大体パワーヒッター。このまま増え続けるとパワプロ2050のパワフェスとかイケメンだけでファランクスが組めそう。同じ顔の主人公とデブのキャッチャーとヒロインが毎回いるというあだち充現象に代表されるキャラクター構成の繰り返しはサクセスにおいても似たようなものであり、その作りを続けていくことが今後のパワプロに呪いとなって降りかかりそうな気がする。「あだち充の呪い」と勝手に名付けよう。


ちなみにパワフェスは難易度が高いという意見もちょくちょく聞いたので、一種の攻略法みたいなのも書くと、投球は緩急とコーナーです。プロスピやってた人だとわかると思うけど、パワプロも(おそらくだけど)内部ステータスとして緩急ゲージのようなものを持っていて、速い球、速い球と続けると、CPUが内部で持つ緩急ゲージが「速」の方に寄っていって速い球に強くなるんですよね。
そこでチェンジアップのような遅いボールを投げると空振りする確率が高くなります。だから、0-2に追い込んだシーンがあったとしたら、インハイのボールゾーンにストレートを2球続けた後にアウトローにチェンジアップを落とすと良いです。
左右のコーナーも同じで、アウトローが打ちづらいからと言ってアウトローを続けるとCPUの目線がアウトローに寄るので、適度にインハイを織り交ぜると良いです。やりすぎると投球も作業ゲーになってしまうので、左打者にバックドアのシュート入れて遊んでみたりとか、リアルっぽい投球するのが一番野球感あって良いよね。


サクセスはついにボイス搭載ということでテンポ悪くなるかと思ったけど、思ったよりストレスないし、ボイス入って良くなったね。市枝いちごの口癖である「○○、○○です!」のリフレイン表現の良さは、ボイスがあることで味わいが全然違った。ただ、会話フェーズで声ありなのはいいけど、試合まで声ありにしてしまったから、1球投げるごとに「おりゃあ!」みたいな男の掛け声を聞かないといけないのはちょっとつらい。

前にもどっかで言ったことあるけど、自分はパワプロのサクセスやる時間を捻出するために高校で野球部辞めた人間なんで、サクセスにはわりと思い入れがある方だとは思います。その人間から見ても、このご時世になって3年のサクセスはさすがに長く感じる。ここ最近のサクセスが1年間だったんで、昔と比べて物足りなさを感じてたけど、我々は既に短時間で幸福回路を全開にする最近のエンターテイメントに脳が飼いならされてしまっている。パワプロが変わったのではない、変わったのは我々の方だったのだ…。


一方で一番変わったのが、実は栄冠ナイン。明らかにCPUの打撃の思考ルーチンが弱まっており、三振率が高まって全体的に打率が下がったことで投手戦になりがちという大きなゲームバランスの変更がある。かと思えばオートプレイだと打ち込まれたりして、難易度もシビアで甲子園に行くのすら大変なリアルさ。昔こんな難しかったでしたっけ…。『ラストイニング』の鳩ヶ谷監督が神に見えてくる。
今作はエラーの発生確率が高く、捕球Gだと野球にならないくらいポロポロしてしまうので、性格内気の選手を集めて亀のように守備を固め、イニング終盤で魔物に襲いかからせてエラーの発生を祈るという戦法が強い。アフリカの呪術師か。



ちなみに今作から、投球画面で俯瞰視点というメジャーリーグ中継みたいに真上から見る視点が追加されており、良いです。リプレイの際の変化球の曲がり方とか打球の飛び方も見てて楽しい。野球ゲーム部分で不満があるとしたら全力ストレートが球威高すぎて打球が飛ばないから強すぎるというという点くらいですけど、それは今後のアップデートで修正予定らしいんで、全体的に良いバランスに仕上がってるんじゃないかと思います。

パワプロって初期の頃は、ヒットと言えばセンター前ヒットで、一二塁間と三遊間抜けるゴロヒットが殆ど出ないバランスだったりしたのが徐々に改善されて、今ではどの方向でもヒットが出るようになったり、カーブやチェンジアップがただの打ち頃の球だったのが、パワプロ2011くらいあたりから緩急で空振り取れるボールになってたりと、地味に本来の野球部分で細かい進化を遂げてきたゲームだと思うんですよね。


シリーズを続けていく中で新しい取り組みやゲームバランスの変更なんかをやらないわけにはいきません。毎回同じ仕様のゲームを買う人はいないし、変わらないということは自ら死を選んだに等しいので、ゲームというのは生き延びるためには変わり続ける必要があるのでしょう。
時にはクソみたいなゲームモードやクソバランスになることもあるでしょう。今回だって全力ストレート強すぎ問題のほか、栄冠ナインのバランスもうちょっと直してもらいたいし、能力アップの画面で動作がモタつくのも改善してほしいところある。しかし、科学の発展には犠牲がつきもの。逆説的ですが、生き残るためには失敗をする必要があるのです。

そしてパワプロは生き残り、パワプロ2050、パワプロ2060とリリースされるにつれ、SFC時代から遊び続けてきた多くのプレイヤーがその人生に幕を閉じていく。
その時きっと、死ぬ間際こう思うのでしょう。
「何かパワプロやってるだけで人生終わった気がする」と。

野球賭博2018


唐突に安楽が開脚前転ができないことを教えてくれるスラッガーの選手名鑑は最高。

野球賭博とか若干馬鹿にするタイトル毎年つけてたら本当に野球賭博の解禁検討しだすのな。ランダムとかいう面白みもなんでもないクジ方式とかじゃなくてぜひ12連単でやってほしいですね。というわけで今年も当たったときドヤ顔できるように12連単置いときます。
ちなみに順位の計算方法は想定レギュラー、控え、ローテ投手、リリーフ投手の3期WARの平均に35歳以上の選手は75%の掛目を入れて、あとは個人の独断と偏見でプラスマイナスを加算減算して出した数字で並べてます。

パ・リーグ
1位 東北楽天ゴールデンイーグルス(昨年順位:3位)
攻撃力に難点があるものの、則本岸の2枚看板を中心とした投手力はリーグNo.1。安仁屋算で言えば、則本岸がそれぞれ15勝、美馬藤平でそれぞれ10勝、その他先発で合計15勝、リリーフで15勝してくれれば十分優勝に手が届く。というかポイントは藤平なんですよ。高卒2年目に2桁勝てというのは酷なところはあるのだけど、ルーキーの去年の投球内容があまりにも良すぎて期待してしまう。43イニングしか投げてないとは言え、先発投手で奪三振率9.0超えは将来のエースの資質十分。一方打線はリーグで下から数えたほうが早いレベルで、大きな補強もなく攻撃力不足は解消されず、茂木ペゲーロが何とか通年で出場できることを祈るのみ。オープン戦大活躍の内田は、去年2軍で3桁の三振を喫した打者なので、シーズンでもブレイクが続くのは期待しづらい。

2位 福岡ソフトバンクホークス(昨年順位:1位)
人間が年を取ることから人間の集合体であるチームにもピークというものが存在するけど、ホークスの場合、今のチームのピークは2016年だったのではないかという印象がある。特に松田が年々打撃成績を落として守備範囲が狭くなっている点が気がかり。内川も今年36歳、そろそろ成績も下り坂に入ってくる可能性がある。とはいえ、長年ウィークポイントだった捕手が甲斐の成長で埋まったり、上林誠知が一軍でも通用するようになったりと世代交代も着々とできており、総じて盤石。ローテ投手には、千賀・東浜・武田・バンデンハークとエース級がズラリと並ぶ。

3位 オリックスバファローズ(昨年順位:4位)
そろそろ吉田正尚が通年出場するシーズンがあってもいいのでは、という順位予想。吉田正尚は打撃のアプローチ見ても、空振り率は低く四球率は高く、長打率も高いという、ホークスの柳田やライオンズの秋山に匹敵するほどいい打者だと思うけど、すぐに腰痛でどこかに行ってしまうのが難点よね。フルシーズン出場するだけでリーグの勢力図を書き換えるだけの威力はあるはず。マレーロも通年でいるので、野手陣の伸びしろはある。投手陣だと金子千尋が成績下降線なのが気になるけど、シーズン後半から一軍で出てきた山本由伸が面白い。二軍とは言え、防御率0.27を叩き出すのには何かあるはず。

4位 埼玉西武ライオンズ(昨年順位:2位)
野上以上に牧田の流出が痛い。野手陣は言うに及ばずリーグ屈指なので、一昨年の岸といい、野上、牧田が投手陣に揃っていれば…とも思えてしまう。ただ、野上の代わりに巨人から来た高木勇人は特殊な変化球持ちなので、巨人のときもルーキーの時に月間MVP取っていたように1年目はそれなりにやりそうな感じある。野手陣だとおかわりが年々成績を落として衰えてきているっぽいのが気がかり。若いイメージあるけど、いつの間にかおかわりも35歳なんやね…。昨シーズンはメヒアも調子悪かったし、山川穂高はさすがに出来過ぎの面があったので、秋山浅村は大丈夫にしても、クリーンナップの長距離砲系が崩れてしまうと一気にストロングポイントの打線が壊れる目もある。

5位 北海道日本ハムファイターズ(昨年順位:5位)
昨シーズンは大谷不在の予行演習みたいなもので、今シーズンはまさに本番。それにしても昨シーズンのエスコバー、谷本、メンドーサの放出に始まり、増井、マーティンまで抜けるともう投手がいない。防御率4点台の有原がエースではAクラスなんて見えやしないどころか、ローテに1軍級の投手を6枚揃えるのも苦慮するレベル。リリーフで獲ったトンキンはメジャーでの高い奪三振率を見るとパットンを彷彿とさせるけど、そもそも出番がない可能性がある。打線は西川近藤を始めとして、昨シーズンはさすがに悪すぎた中田翔さんの復活やレアード、それからメジャーでの実績があるアルシアもいるけど、とにかく投手の懐事情に苦慮しそう。

6位 千葉ロッテマリーンズ(昨年順位:6位)
オープン戦の成績はいいけど、さすがにフルシーズンともなると戦力の差が出てくる。日本人選手の実績は乏しく、ドミンゲスやボルシンガーがタイトルクラスの活躍してようやくAクラスが見えてくるレベルだけど、両選手ともさすがにそんな成績はムリよね。特に打撃陣の長打力の無さが辛い。他球団が柳田とか吉田正とかウィーラーとか揃えている中で、明らかにクリーンナップで見劣っており、要はその相手に勝とうと思えばそれ以外の点で相手よりもストロングポイントを持たなければならないのだけど、それも見当たらない。ルーキーの安田は思ったよりも早くチャンスを手にすることになるのでは。

セ・リーグ
1位 広島東洋カープ(昨年順位:1位)
オープン戦の調子は悪いけど、実績ベースでの野手のWARはリーグでも圧倒的なので心配なし。タナキクマル鈴木誠也のうち2人以上が故障しなければ優勝は固いのでは。タナキクマルはいずれも若いのでポジションの補強所は自然と絞れてくるとは言え、坂倉がいながら中村奨成獲るとは思わなかったけど、これほどの可能性を秘めた捕手が2人もいるというのは凄まじい。捕手というポジションは、優れた選手が出てくると他のチームとのアドバンテージが大きくなることから、ヤクルトの古田、ホークスの城島、巨人の阿部、いずれもチームの黄金時代を築いたけど、この2人のうちいずれかが出てくるようなことがあるとカープの黄金時代は長く続くかもしれない。

2位 読売ジャイアンツ(昨年順位:4位)
リーグ屈指の投手であるマイコラスが抜けた穴は大きいけど、去年いないに等しかった山口俊と澤村が戻ってくることに加え、野上とゲレーロの補強もあり、上原も帰ってきた。陽岱鋼もシーズン後半だけということはないだろうし、総じて去年よりは上積みがある。特にゲレーロはウィークポイントのレフトということもありピンズド補強。岡本はまだ確実性に難があるものの、明らかに衰えを見せていて特に走塁守備で足を引っ張っている阿部を代打専に持って行く決断ができれば、チームとしてはプラスだろう。どうでもいいけど、今年からセカンドに定着しそうな吉川尚輝の「運動神経いいヤツ」な雰囲気すごいね。クラスに1人はああいうタイプの奴いたよな。

3位 横浜DeNAベイスターズ(昨年順位:3位)
去年は対広島の9回裏3連発あたりから完全に流れが来たという感じでそのまま日本シリーズまで行ってしまったけど、ああいう一過性の奇跡に頼らないためにはウィークポイントの補強が重要で、その点大和の補強は的確。倉本から大和ということで相当失点は減りそう。これで懸案の二遊間問題が片付いて…と思ったら倉本二塁コンバートという衝撃。まぁ遊撃手で使うよりは全然いいと思うけど…。投手陣は今永が開幕出遅れという話もあるけど、ルーキーの東は即戦力だと思うし、枚数自体は揃っていないわけじゃない。それにしても去年の外国人はパットン以外は外れだと思ってたけど、ウィーランドの大成功が意外だった。結局OPSも.739と並のレギュラークラスだし、DH使ってるようなもんだからこれは引き続き大きなアドバンテージになりそう。

4位 東京ヤクルトスワローズ(昨年順位:6位)
去年は96敗と、負けに負けた。5ヶ月程度のシーズンで96敗というのはほぼ毎日負け続けているような感覚だったのでは。しかしブキャナンの13敗、原樹理の11敗はいずれも神宮をバックに防御率3点台にまとめながらのものだし、そこまで投手陣が揃っていないわけではない。今年は川端も戻ってくるし、いわゆる「ヤ戦病院」状態が解消されれば、案外ひょいっと上に行ったりする力はあるんじゃないかと思う。あと、青木宣親が帰ってきたのは大きい。年をとって衰えたという見方もあれど、メジャーで2割8分打てる打者が日本の環境に慣れてきたらそれなりの数字は残すだろう。NPB通算打率.329の打者の技術を侮ってはいけない。

5位 阪神タイガース(昨年順位:2位)
明らかに特にリリーフを中心とした投手力に偏ったチーム。リリーフ陣は石崎ドリスあたりは投げてる球が別格だなというところあるし、マテオ高橋聡文桑原と面子も揃う。糸井福留鳥谷と出塁率タイプの選手が揃っているので、それを返すクリーナーの打者が必要とされており、その役目がロサリオに期待される。ただそのロサリオがオープン戦で散々なのが気がかり。KBOで無双して日本に来た瞬間サッパリというのはロッテのナバーロが思い起こされるだけに、ナバーロコースにならないことを祈るのみ。糸井鳥谷は37歳、福留は41歳とチームの中心打者が高齢化しており、いつ成績が急落してもおかしくないことも気がかり。

6位 中日ドラゴンズ(昨年順位:6位)
かつてメジャーで開幕投手を務めたジーはよく獲れたねという感じだけど、若干下り坂に入っているだけに、一人でチームを浮上させるだけの成績を期待するのは厳しい。打撃力守備力ともにリーグの他のチームと比して優れているというわけでもなく、全般的に苦しい。落合時代以降の立て直しにはまだ時間がかかりそう。打線はゲレーロが抜けて迫力が落ちたので点を取るには一工夫必要になりそう。少なくとも低出塁率の京田を上位打線で使うのはやめたほうがいいと思う。あと、去年も同じこと言ってた気がするけど、ホームランバッターなのに空振り率が低いビシエドは急に成績向上する余地ありそう。


そんなわけで今年も野球の季節だー!

口を開けながらVRができない

百聞は一見にしかずオブザイヤーの近年における頂点として君臨しているのがVRというコンテンツだと思うんですけど、「面倒くせえ」というハードルを乗り越えてみてみると、支払った面倒臭さの対価以上のリターンは得られます。
特に大型筐体は視覚聴覚だけじゃなくて体感が乗ってくるので、向こうの世界に持って行かれる感が1段階上がって良いです。でも、どこもそうなんですけど、風を演出するために筐体の前にサーキュレーターが置いてたりして、ゴーグル付ける前に目に入ってくる光景の手作り感が一番良さみある…。

前にハウステンボス行ったらVRコンテンツ面白かったんで、東京戻ってから渋谷の『VR PARK TOKYO』と池袋のサンシャイン60(なぜか展望台登ると大型VR筐体がいくつか置いてる)行ってきたんすよ。

大型筐体のVRって、クソビジネスライクな話をするとそれほど儲かるとは思えなくて、遊ぶための工程やルールが複雑すぎることが要因で、1人2人の人間が遊ぶのにスタッフも専属で同じように1人2人ついているような状況なので、それでいてサンシャイン60の1回400~600円だったり、『VR PRAK TOKYO』の90分遊び放題3,000円前後だったりするのは破格の安さ!

大型筐体も汎用品じゃないので安いものではないし、何より世の中で一番高いのは人間っすからね。多分人間側のマス層が当たり前に使えるほどVRの使い方が普及するか、VR側の使いやすさが進化して誰でも使える道具になるかのいずれかの状況にならない限り手間がかかりすぎるので、VRはビッグマーケットにならないと思われるんですが、ともかくも現状ではこんな値段でやっていけるのかと心配してしまうほど安い価格で専属スタッフがついて、関口宏のフレンドパークのゲスト並に手厚いサービスを提供してくれているわけです。

『VR PARK TOKYO』だとレーシングや鉄骨渡りのコンテンツそれぞれにスタッフさんが付いてくれて、遊び方について随時指導してくれるし、野球のゲームだと実況までしてくれるわけです。こんな値段しか払ってないのに、一体儲けはどうなっているのか。この3,000円からスタッフさんの時給、渋谷の高い地代、筐体の減価償却費、光熱費、小道具の諸経費……それらを引いてようやく利益……。他人事なんでどうでもいいですけど、社畜根性が勝手にそろばんを弾いてしまう…。休日なのにつらい…。

そんなわけで現状大型筐体VRはかなりお得な価格で提供されていると思うので、ぜひ遊ぶと良いのではないでしょうか。

ただこの手の体感VRにはひとつ大きな問題があるんすよね。
とても、とても大きな問題が…。


これ。

なんでVR遊んでる人の絵ってどいつもこいつも口をポカーンと空けてるのか問題。インタビュー受けてる時にろくろ回すIT企業の経営者並に定型化しているところがある。

広告の絵面的な話だと、顔のうち外に出ている部分が口しか無いから口で楽しさを表すしか無いというのがあるのでしょう。口だけで楽しさを表現できるのが上手い人には、手タレみたいな需要もあることでしょう。

しかし我々はどうすればよいのか。

「うおおおすげええ!」みたいに叫びながら楽しく遊べるかというとムリなわけです。いや、実際たまにそうやって遊んでいる人見かけるんですけど、ムリなわけです。内心「うおおおすげええ!」ってなりながら「ん? これがVR? おお、すごいね。うんまぁまぁいいんじゃない」くらいのリアクションしちゃうでしょ。ゴーグル付けて大騒ぎするの恥ずかしいという気持ちがすべての行動を押しとどめようとしてくる。

一方で、大型筐体のVRには、必ず専属のスタッフが付いてくれて遊んでいるところの実況までしてくれるんですよ。何というか「楽しいです!」ってしておかないとスタッフさんに申し訳なさあるじゃないですか。無表情でコンシュマーゲームやっているのとわけが違うんですよ。相手がいるんやで!

そう、これが『スタッフさんが親切にサービスしてくれてるので楽しんでいるようにしなきゃという気持ち』と『内心冷めてる気持ち』という、外部と内部の心のコンフリクト問題……。この問題を適切に解決し、正しい振る舞い方を身に着けない限り、我々は心から体感VRを楽しむことはできない……。

人に気を使わずにすむVRの世界に入るために人に気を使っている不思議。
バーチャルリアリティというのはね、誰にも邪魔されず、自由で、なんというか救われてなきゃあダメなんだ。独りで、静かで、豊かで…。

入ったこと無いからわかんないですけど、きっと老人ホームでも同じ問題があることでしょう。
老人ホームってボケ防止のために「き~ら~き~ら~ひ~か~る」とか子どもの歌を歌わせたりするみたいですけど、やっぱりあれも「俺は○○商事の専務までやった男だぞ」とか思う心と「でもここで事を荒立てたら頑張ってるスタッフさんに申し訳ないし」と思う心が衝突しながら「き~ら~き~ら~ひ~か~る」とかクッソ冷めた心で歌ってるんじゃないかと思うんですよね。
つらい。未来にはつらさしかない。でもそうしなければならないのだ。

どうか一人でVRに入ってそのまま死ぬまで楽しめる機械が、老人になるまでに完成されていますように。


そんなわけで自分の中に体感VRプチブームが来てたんで色々調べてたんですけど、その中で今一番アツいのがこれ。

FIRST AIRLINESは、地上にいながら航空・世界旅行の体験を味わうことのできる世界初のバーチャル航空施設です。およそ110分のフライトの中で、NY、パリ、ローマ・ハワイ様々な国の様々なアクティビティを五感を使い、楽しみながら現地料理にあわせ、一流のシェフが趣向をこらした機内食をお楽しみいただけます。
VRで世界旅行を楽しめる『FIRST AIRLINE』というサービスです。そりゃVRというのはある種の「ごっこ遊び」みたいなところあるんでしょうけど、VR海外旅行を集団でやるというのはエッジが効きすぎてもはや一種のアート性まで生まれてやしませんか。

明らかに自分の脳は今いる場所が池袋だと認識している中で「お客様、ニューヨークに到着いたしました」という声を聞いてどんな顔をすればいいのだろう。間違いなく地上にいる状態で出された機内食に機内食を感じることができるかどうかは、もはや自分自身にかかっているのだ。

自分は試されている。これは現実がVRに再現されているシステムではない。VRの情報が現実を侵食し、VRの世界を現実でも維持するために自分自身が適応しなければならないシステムだ。
この現実とVRの複合により作られた「ごっこ遊び」の世界を守るためには、『VR PARK TOKYO』で気を使うというレベルではない配慮が要求される。ゴーグルを外しても気を抜くことが許されないのだ。お前は今ニューヨークにいる。

これはルールの転換。自分がVRに行くのではなく、VRが現実に来るのだ。

ただ、なぜその発想を池袋で機内食を食べるサービスに使おうと思ったのかが最大の謎なんですが、技術の黎明期には往々にしてこういう試みが生まれて良いですね。

仮想通貨スタドリの見た夢

……夢を見ていたようだ。長い……しかし、悪くない夢だった。

君にはどこまで話したんだったかな、そう、仮想通貨の話だったな。
仮想通貨はイーサリアムなど一部の通貨を除いて発行数量に上限があるデフレ通貨が多く、外部から資金が流入する限り価格が上昇し続ける仕組みにある。「時価総額=単価×数量」を置き換えると「単価=時価総額/数量」となる。誰にでもわかる単純な算数だ。要点は、数量が増加しないことや増加量が最初から宣告されていることだ。

法定通貨と違い、中央銀行の意思一つによるインフレから仮想通貨は自由だ。考えてみろ。自分の持っているカネの価値が、誰かの考え一つで下がる状況で安心して暮らせるか? いわば法定通貨はカネが統制管理された社会主義のようなものだが、仮想通貨はレッセフェール(自由放任主義)の状態に近いだろう。また、恣意性を排除する性格が強いため、不況時に金融緩和を行って景気を刺激することはできない点は留意しておく必要があるだろう。ハードフォークなどで一部中央による管理性が顔をもたげることもあるが、法定通貨と比べれば全体として中央からの管理性は依然低いと見て良い。

自由、そして反権力。人はこれらの言葉から紡がれる物語を魅力的に感じる。そして自由は中長期的に見れば殆どの状況で勝利し続けてきたことは歴史が証明している。投資とは元来「この企業は成長する」「この土地は値上がりする」という未来の予想に対する賭けになる。では、仮想通貨は何に対する賭けだろうか?

これはレジームチェンジに対する賭けなのだ。例えば法定通貨ではなくリップルを用いて決済をするのが当然の世の中になる。その未来に賭けて予めリップルを保有しておく。そういう未来が訪れることへの賭けなのだ。この規模のレジームチェンジが起きる可能性は高くはないだろう。だからこそ高いリターンが得られる賭けでもあるのだ。

そう考えた私は仮想通貨への投資を始めた。
なに、そんな確固たる信念があったわけじゃない。ナポレオン戦争の際、ロスチャイルド家は「英国が負けた」と誤情報を流通させて英国債を買い上げて莫大な利益を得たことで知られるが、ナポレオンの戦費調達にも携わっており、実際のところどちらが勝っても利益を得られるようリスクヘッジを行っていたそうだ。それと同じだよ。法定通貨が勝とうが、仮想通貨が勝とうが関係ない。ただ、どちらの通貨が勝っても資産を失わないようにしたいと思っただけなんだ。

ところが、仮想通貨は思わぬ暴騰を始めた。私の資産は10倍、そしてみるみるうちに100倍を超えた。
金融危機以来、金融緩和が状態化し、FRBや日銀は兆単位のカネを市場に流通させ、挙句の果てに日銀などは当座預金にマイナス金利を付け始めた。この限界を超えた金融緩和で溢れたマネーが行き着く先が仮想通貨だったというわけだ。流通量を増やさない仮想通貨にカネが殺到した事実は、水道の蛇口を捻るように金を垂れ流す法定通貨に対するアンチテーゼだったのかもしれないな。お前らがジャブジャブ薄めて価値を落とし続けるカネなんてもう持ちたくない、というわけだ。

バブルには必ずカネの入口が存在する。カネは必ずどこかからやってくる。無からカネは生まれない。バブルと見たら「そのカネはどこからやって来たのか?」を必ず自問自答することだ。
第一次世界大戦が終わった後、アメリカは超好景気に沸き、株や不動産は暴騰し、この世の春が訪れた。その理由がわかるか? 第一次世界大戦ではアメリカはイギリス等の国債を購入することで資金を出し、戦勝国に対して大量の債権を保有していた。その償還が始まったことにより多額の資金がウォール街に流入したのだ。

短期間で上がりすぎた金融商品は必ず暴落する時が来る。カネの次の出し手がいなくなるからだ。
例えば、100円で買った株が200円で売れたとしよう。このとき投資は2倍になったわけだが、200円で買った奴は400円で売らなければ2倍にならない。400円で買った奴は800円で売らなければ2倍にならない。インフレもなしにこの課題を解決するのは不可能だ。

そして私は売った。すべてが弾けるその前に。
実際にバブルかどうかは判定する術はない。もしかしたら800円で売れるのかもしれない。しかし私にはそんな勇気はなかった。

考えてみれば、私は「日本円に換算して○○円儲かった、損した」と常に日本円というフィルターを通じて仮想通貨を見ていた。
通貨はそもそも信用を得るのが最も難しい。日本円でさえ、明治政府により最初に発行された際は信用されず、紙切れだった。仮想通貨は、すぐに円やドルに変換できることにより信用を担保していたのだ。私はその兌換性を信用していただけで、最初から仮想通貨が標準的な通貨になることを信じてなどはいなかったのかもしれない。そうでなければ、最初から円換算での価値など考える必要はなかったはずだから。

そして仮想通貨を円に換え、手元に残ったのは目的のない大量のカネ。

意味がない。実に意味がないカネだ。
「仮想通貨は未来の決済通貨になる」頭の片隅で少しでも信じたその夢は、いつしか私の楽しみとなっていたことにようやく気がついた。しかし私は船から下りてしまった。目的のないカネほど虚しいものはない。


そんなときだった。彼女が動き出したのは……。

???「レアやSレアのアイドルをGETするにはガチャが一番!」


発行数量を絞れば上がる……。そんな単純な事実に彼女が反応しないわけがなかった。

モバコインの歴史を知る者であれば、かつてスタドリがモバコイン界の基軸通貨として君臨していたことは記憶に残っていることだろう。例えば神撃のバハムートで事実上の通貨として機能している水と交換するためのレートは「スタドリ1:水4」程度であったため、水を直接買うのではなく、まずスタドリを購入して水に換えるのが合理的だ。単一のゲームを超える支配的な決済通貨としての位置付けを獲得したわけだ。

スタドリの決済機能はゲームの世界に留まらず、麻雀などの賭け事の対価として使われたり、同人誌の売買に用いられたという話もあるくらいだ。スタドリ経済圏は、ゲーム間どころかリアルの決済にまで到達したのだ。これを通貨と呼ばず何と呼ぼうか。

しかし今現在、スタドリは資産の保有として決して望ましくないアセットクラスと言えるだろう。
なぜか? 通貨の供給量が著しく多かったためだ。円とスタドリの実態レートを表すのは「1スタドリ=100円」の固定為替レートの公設市場ではなく、変動相場制が採用されているRMT市場の方を見るべきだ。

アイドルマスターシンデレラガールズがリリースされた直後の2012年1月ごろのRMT市場では、「1スタドリ=50円」程度の実勢相場だった。ところが半年後の7月頃には「1スタドリ=20円」程度のレートとなっていることが確認されている。ユーザーが減り、スタドリを求める者が減少したからというわけではない。むしろ2012年7月頃はピークに近いユーザー数であり、スタドリを求める者は多かった。それほど新規供給されるスタドリが多かったのだ。スタドリの供給はその後も断続的に続けられ、現在では「1スタドリ=5円」程度まで円高ドリ安が進行している。

円とスタドリの関係は、ちょうど、ビットコインと円の関係に似ているだろう。数量を増やさなかったビットコインに対し、金融緩和を続けた円は価格を下げた。そしてその円以上に市場に供給されたのがスタドリだったというわけだ。

彼女は考えた。再びスタドリに資金を呼び込むにはどうすればよいか。
そして、新規にスタドリを供給することを一切停止することを宣言したのだ。
需給を絞るとともに、同時にRMTも解禁。円をスタドリに呼び込む体制を整えた。

スタドリによる価値の交換は、トレードにより即時に決済が終わるという送金速度が特徴だ。しかもこの通貨はゲーム内のトレード機能を利用したものなので、決済手数料が0円なのだ!

突如として目の前に現れた最高の仮想通貨……!

この資産に投資するために私のこれまでの成功はあったのかもしれない。忘れていた投資意欲が蘇る。開いた手が震える。目前の雲は晴れた。自分がやるべきこと、なすべきこと、ようやくここにきてわかった気がする。自分の信じる未来に賭ける。その未来が訪れるまで、今度は船から下りてはいけない。今度こそ握り続けるのだ!

価格の上昇が約束されたような彼女の施策に、投機マネーは即座に反応。スタドリの価格は急騰した。
通貨の強さを決めるのは、需要と供給。そして信用だ。彼女の賢かったのは、RMTをむしろ積極的に奨励することでドル、そして円への逃避がいつでも可能な資産であることを示したことだ。耳をすませば彼女の声が聴こえたはずだ。「争え……争え……」

急騰の初期段階から参加できたことで、私の資産はみるみるうちに100倍まで膨れ上がった。仮想通貨、そしてスタドリへの投資を通じて、ついに資産を当初の1万倍まで増やすことに成功したのだ。投資、あるいは投機。もはや今となってはどちらでも良いが、その面白さの本質は「自分の信じた未来」に対して賭けること。そのリターンが数字として答え合わせされるから面白いのだ。

「自分の信じた未来」が、正解だったと世界から示されること、それ以上に楽しいことがこの世に存在するだろうか。


ところで君自身は仮想通貨を所有しているだろうか?

持っている? 結構。しかし本当に君は仮想通貨の所有権を持っているのかと考えてみたことはあるか?
「通貨」なのだから我々はどうしても自分に所有権があるものだとイメージしてしまうが、仮想通貨は文字どおり「仮想」の通貨なので物体としての実態がない。そのため、そもそも有体物に対する権利である所有権の対象とはならない。
かのマウントゴックスに対する裁判においても「ビットコインは所有権の対象とならない」という判決が示されている。そのため、かの事件においては所有権に基づくビットコインの返還請求ではなく、「システムの適切な管理を怠ったこと」による損害賠償請求となっている。

そう、君は仮想通貨を所有していないのだ。強いていうなら、君が持っているのは売却した仮想通貨相当額の金銭を引き渡すよう請求できる債権という形になるだろうか。例えば銀行に預けている預金は君の銀行に対する債権だが、仮想通貨は「随時価値が変動し、保護されない」銀行預金というイメージを持つと近いかもしれない。
銀行の場合は破綻しても1000万円までは預金保護されるが、仮想通貨の場合はそれがないため、預ける先の信用はしっかりと考える必要があるだろうな。債権というのは自分がカネを貸しているようなものなのだから、借り手の支払能力を確認するのは当たり前のことだ。

ではスタドリはどうだろうか? 
我々は保有するスタドリに対してどのような権利を持っているのだろうか?

仮想通貨は有体物ではないので所有権の対象とはならないと話したが、スタドリも同様に有体物ではないので所有権の対象とはならない。一般社団法人日本オンラインゲーム協会が定める「オンラインゲームガイドライン」には次のように記載されている。

「課金方式を問わず、ゲームプレイでのデータ(キャラクターやアイテム、セーブデータ等)はオンラインゲーム提供企業の所有するサーバー上にあります。前述の課金方式によりゲームのサービス利用料金、あるいはデータの限定的なサービス利用権を販売しており、データ自体の所有権につきましてはお客様にはございません」

マウントゴックス事件で示された「所有権は有体物しか対象としない」という考え方からすると、妥当性の高い考え方といえるだろう。そう、我々はスタドリを保有しているのではない。「スタドリを使うことのできる権利」を保有しているのだ。

気がつくのが遅かったかもしれない。
最初から彼女は所有権など譲り渡してくれてなどいなかったことを。
我々が投入した円と交換にスタドリを引き渡していたのは彼女だった。彼女はスタドリの価値を高騰させたことで、スタドリを多額の円と交換。すべてのスタドリを引き渡したその時に、彼女がスタドリの価格を維持するインセンティブが消えてなくなるのだ。

まもなくアイドルマスターシンデレラガールズの運営の健全化の名目のもとに、RMTが禁止され、円やドルへの逃げ道が塞がれた。法定通貨に交換できない仮想通貨に乗せられた信用という名の価値はそのとき剥がれ落ち、スタドリはそれそのものが持つ本来の価値に戻ることを余儀なくされた。仮想通貨はなくならない。ただ円に換えられなくなるだけだ。

祭囃子が鳴り止んだとき、我々の円は彼女の元へ集まり、我々にスタドリが残された。今となってはこの仮想通貨スタドリにはどれほどの価値があるだろう。誰がこの仮想通貨を欲しがるだろうか。
まぁそれでもいいじゃないか。投機に踊り、今や夢破れた私たちの手元にはスタドリだけだ。ならば、残された者たちだけでこれからもスタドリで価値の交換を行い、仮想通貨の経済圏を広げることを再び夢見よう。

通貨の価値は信じる者だけのためにあるのだから。
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