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当たり判定ゼロ シューティング成分を多めに配合したゲームテキストサイトです

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電子プチプチとマッドマックス

『マッドマックス 怒りのデスロード』は、ちょっとブワーッと向こうの方まで行って、そこで主人公の葛藤と決心があり、ちょっとブワーッと戻ってきてみんなハッピーという「行きて帰りし物語」 であって、構造的には非常にシンプルで基本に忠実というか、いかにもなハリウッド脚本術感のある映画でした。難しいテーマではジェンダー論とかそういう要素も内包しているみたいなのですが、なにぶんウォーボーイ育ちなもので「世紀末の世界で性差別もクソもあるか」くらいの感想しか出てきませんし、マックスのPTSDとか悩み的なものも全く共感できなくて、余計な葛藤してる暇があればサンダープーン投げて車両を破壊して欲しいし、ドラムをドンドコドンドコ鳴らしてギターから火を噴かせてガソリン無駄遣いして欲しいし、エンジンフカしながらV8を讃えていて欲しいのです。

そんなわけでゲーム版のマッドマックスが発売されたワケですが、ウォーボーイのみんなもウェイストランドで毎日元気に暴力に明け暮れていますでしょうか。


 
シャドウオブモルドールやった人ならわかると思いますけど、ぶっちゃけのところゲーム版マッドマックスはシャドウオブモルドールのコンパチゲーみたいなものであり、三國無双に対する戦国無双みたいな感じです。基本はMobに囲まれる集団戦で、□ボタンでボコボコ殴っていって、敵の攻撃前に△が表示されるので、ボタン押してカウンター。効果音まで使い回し。おのれワーナーゲームス、というよりも、合理的なフォード生産方式のような、アメリカン大量生産スピリッツをそこには感じることができます。ゲームなのに漂う工業主義の油の臭い。
ただ、無双も三國無双と戦国無双は同じゲームなのかと言われれば違いますし、基礎システムに対する味付けでゲームの個性というのが出てくると思うのですね。原料が同じ卵だからといって、目玉焼きとスクランブルエッグが同じ食べ物かと言うと違うみたいな感じですかね。まぁお腹に入ったら全部一緒なんですけど。


その独自性の面では、マッドマックスは茨城のヤンキー並に車が好きなマックスが主人公なだけあって、RPGでステータスを上げていくがごとく車の改造を行ってひたすら車のステータスを上げていくゲームという味付けがされています。ほんのり漂うレーシングラグーンの香りに思わず口からポエムが流れ出てきますが、搭載するのはV8エンジンですし、走る世界は夜の都会ではなくて世紀末の砂漠なので、プレイヤーは、あ、今遊んでいるこれはレーシングラグーンじゃなくてマッドマックスなのではないかと気づくわけです。

神は細部に宿るといいますが、この手のキャラゲーで大事なのはゲームシステムじゃなくてエッセンスなのよ、という気もします。


車がガソリン消費して走る概念があるのも良いし


死体を見つけたらウジ虫を食べてHPを回復することができるのも良いし


水たまりを見つけたら水筒に水を補給する必要があるのも良いし


たとえトイレからでも水を汲んで飲めるの良いし


「み、水…」とか言いながら彷徨っている放浪者に水を与えることができるのも良いし


ガスタウンは湯水のように貴重なガソリン無駄遣いしているのも良いし


敵のボスの車がムダに巨大で偉そうなデザインなのも良いです


おおよそ味付けにおいてはマッドマックス感あるのですが、システム面に目を戻すと、なぜこのゲームをオープンワールドにしてしまったんだという悲しみがあります。


洋ゲーのオープンワールドにありがちな、マップ上にやたらと配置されたアイコンを一つ一つ回って潰していく作業のどこにマッドな世紀末があるのか。せめてバリエーションが多くて飽きない仕組みがあれば良いのでしょうけど、作業の種類としても両手に収まる程度のもので、犬を連れて地雷原を巡って地雷除去をするというカンボジアのNGOみたいな仕事とか、廃墟回ってスクラップ集めたりとか、そこらに設置された「かかし」とかいう塔をハープーンで引き倒して回ったりとか、全体的に内職じみた作業の反復が多くて、1つ処理するごとに5円くらいもらえそうな雰囲気あります。メインミッションだけやってれば10時間もあれば十分ゲームクリアできてしまうというのも、内職やって水増ししなければならない状況を作り出しており更に悲しみを誘います。

『バイトヘル2000』のボールペン工場が揶揄したように、ゲームというのは多かれ少なかれ作業的な側面はあります。
疲れている時にオープンワールドのプチプチ潰しているような作業やってると、何も考えないでタスクが減っていく感覚を味わえるので脳死快楽があると思うのですが、平常時にこの電子プチプチ作業をやっていると、例えようもない虚無的な何かが心のなかに押し寄せてきて、なぜ世界から核兵器はなくならないのか…、なぜ粗大ごみの廃棄料金は市町村ごとにかかったりかからなかったりするのか…、なぜ消費税が上がったのにダイドーの自販機は100円のままやっていけてるのか…、本来考えなくとも良いはずのことが頭のなかをグルグルと巡り、遊んでいるはずのこちらの精神がマッドになってくるし、ウォーボーイとなって国道を駆けてヴァルハラに行きたい気持ちも生まれてきます。
オープンワールドは、いずれ電子プチプチの世界から脱しないとみんなの頭がおかしくなってしまう恐れがあります。それに最近ちょっと遊ぶのが辛くなってきました。前のゲームで頑張って全部プチプチ潰したのに、また新しいの出てくると「おおお…」ってなる。かと言って、洞窟で分岐があればとりあえず両方行ってみて全ての宝箱を開けてきたJRPGプレイヤーは、アイコンを見て見ぬふりすると発狂するという性質を抱えています。

結局のところ、ゲーム版マッドマックスというのは何なのか。プチプチなのか。マッドマックスなのか。

たぶんシャドウオブモルドール遊んだ人かどうかで評価の変わるゲームでしょうけど、古来より大和民族に伝わるファミ通文学においては、こんなとき「ファンなら買い」というオブラートに包んだ表現を行っており、昔の人はえらいことを考えたものだと思いました。
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いやはや感服
シャドウオブモルドールの記事をきっかけに読ませてもらいましたが、めちゃ参考になりました。
ちょうど年末するゲーム探したりする時期なのでもんげー助かりました。
ロッケラ 2015/12/23(Wed)22:02:51 編集
無題
ありがとうございます。「ファンなら買い」の心が伝わると良いのですが…。
りくぜん 2015/12/28(Mon)22:50:06 編集
Clear