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当たり判定ゼロ シューティング成分を多めに配合したゲームテキストサイトです

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バーチャル立法シンドローム

「昔のネットゲームって刑法がなかったんだって」
「マジで?」
「マジマジ。私、最近、ネットゲームの歴史について調べてるんだけど、30年前のネトゲは犯罪行為がシステムで規制されてたんだって」
「誰がそんな自由のない箱庭をありがたがるんだよ。牧場の牛じゃねーんだから」
「ところが40年前のネトゲは、悪いこともシステム上は許容されてた」
「今と同じじゃん」
「そう」
「なんで犯罪を規制したんだ?」
「犯罪があると被害者が生まれるから。被害者は一般的に力がない。だからこそ被害者になるのだけれど、被害者は力がないから加害者に復讐することができない。だから被害者はこう訴えた『犯罪のない世界を作って欲しい』」
「そんな世界あるわけないだろうが」
「でも作れた。バーチャルだから」
「そりゃ今でもそうだけどさぁ…。誰かに作られた世界に住むって胸くそ悪くねぇか?」
「昔の人は、あんたみたいにネトゲに思い入れがなかったのかもしれないわね」
「そりゃ俺はこの世界が好きだよ。みんなで悩んで、喧嘩して、苦労して、ルールを作って動かしている世界だもん。誰かに作られた世界じゃなくて、俺たち自身が作った世界だもんな」
「でもそれこそが、みんながそれだけ時間と頭と労力を使ってるって証でしょ。昔の人は、社会のルール作りを運営会社にアウトソーシングしたのだから、ある意味効率的ではある」
「まぁね」
「『ルールってのは、弾力的であればあるほど、ルールの間隙を突こうとする人と真面目な人の間で格差が生じる。硬直的であれば格差は減少する』みたいなこと、先週教授が呑んでたとき言ってたじゃない」
「うん」
「だから昔のネトゲが硬直的なルールに進んでいったのは、ユーザー間で格差なく平等に競争できる仕組みを作りたかったんじゃないかなぁ」
「じゃあいまのネトゲが自由なのは?」
「ルール作りに飽きたんじゃない?」
「随分適当だな…」
「冗談。それだけユーザーが成熟したんだと思うよ。このゲームだって、不満があっても、安易にシステムで規制してしまうのではなく、話し合いで一つ一つ仕組みを作って今がある。そして社会構築の賛同者を作り、警察機構を作る。そして法を作る」
「知ってる知ってる。Justinって人が中心に頑張ったんだろ」
「Justinさんは初代委員長ってだけで、最初は職業裁判官の人や弁護士の人なんかの沢山の人たちが、リアルのルールをベースにして法律の制定作業を進めていったみたい」
「ふーん」
「Justinさんは、運営の中の人だったって説もあるらしいけどね」
「なんだそりゃ」
「運営は、とにかく自由なゲームが作りたかったらしいんだよね。運営が目指したルールはただひとつ『運営はルールを決めない』」
「おかげで何でもできるゲームができたってわけか」
「自由ね」
「自由だな」
「その代わり、このゲームで地位を得るにはルールについての知識が必要になったわ」
「そしてスリルもあるってか……いい加減、その目玉でお手玉するのやめろよ、バチが当たるぞ」
「あんたこそ死体を輪切りにして遊ぶのやめなさい」
「なぁ、こうしてPKやって遊べるのも自由があってこそだし、罰があるからこそスリルがあるわけだな。偉大なる先人さまさまだぜ」
「そうね、治安維持隊が来るまでにそろそろここからおさらばしましょう」
「だな。そういやお前明日の民事訴訟法のレポートもう書いたのか?」
「これからやる……ちょっと夜食でも買ってこようかな」
「先週ニュースでやってたけど、その辺最近通り魔が出るらしいから気をつけろよ」
「マジで。あの連中って何考えてるのかしら。早く捕まって死刑になればいいのに」
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